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テクストの力

この連休、エーコの「フーコーの振り子」読了。グノーシス、薔薇十字、ソロモン神殿、ヘルメス思考と、オカルティズムの周辺に散りばめられた史実が、ぐいぐいと読み手を先導する。

史実の周りに創作を加えた主人公たちが、その創作をホンモノだと思った秘術信仰者たちに追われるようになる。創作、フィクション、嘘であることが通用しなくなっていく。テクストの巨大な力。読みながら、やはりどうしても「プラハの墓地」が重なっていく。シオンのプロトコルが、どれだけの罪を生んでしまったか。議定書の真偽の問題はもちろん重大だけれど、そこに綴られた言葉たちが作り出した罪。

陰謀史観、といわれるけれど、世の中は複雑すぎて、すべてを知ることはできないし、どこかで情報を選択して、判断しないわけにはいかない。

だからこそ、こうして言葉を紡いでいくことの見えない力は心に留めておかねば、と思う。色々な意味で、できるだけ「良い言葉」を見つけて伝える努力が、言葉の良い連鎖を生む可能性を、信じようと思う。